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2015.07.27

スーツ太平記  其の百五十  読書の話題


 うだるような暑さが続く炎天下の東京です。暑中お見舞い申し上げます。
しばらく 「スーツ太平記」 お休みしていましたが、そろそろブログ再開しようとおもっております。

今更、大上段にかまえて書くようなこともないし、いわゆる商品知識的な話題も食傷気味だし、身
辺雑事的なことを短く書いていこうとおもっています。

 お笑いの又吉さんが、芥川賞をとりましたね。素晴らしい作品らしいので、近々読んでみようとお
もっています。このタイプの異能の作家と呼ばれている人たち (他に本業を持っている) は、過
去を見ても、大体、一作もしくは数作で終わってしまう人が多いようです。やはり仕事柄、継続的に
作品をだしてゆくのは難しいのでしょう。


ryu_aktgw.jpg

 『エーゲ海に捧ぐ』 の池田満寿夫氏、『きれぎれ』 の町田康氏、『人間万事塞翁が丙午』 の青
島幸雄氏、『演歌の虫』 の山口洋子氏、『長崎ぶらぶら節』 のなかにし礼氏、などなどけっこうい
らっしゃいます。皆様、本職で本当に素晴らしい仕事をされているので、連続大ヒットは難しいよう
です。

 文学史的には残らない、異能の天才たち。でも、プロの職業作家には見られない、なにか素人く
さいが強い光を発しているのです。

 これら異能の作家たちを、再読できるかどうかは、その作家の文体によっているところが大きいよ
うな気がします。


                                        テス・オーヒラ

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2015.02.10

スーツ太平記  其の百四十九  ツィードの手入れ (2)

          英国に伝わる汚れ取り伝説

 ① チョコレートがついた時(バレンタインディに注意)

   冷水に石鹸を、とかし部分洗いをする。

 ②口紅がついた場合 (奥様にみつからないように)

   食パンの白い部分でたたくように吸い取る。

 ③ コーヒーをこぼした場合 (よそ見しないように)

   温水を浸した布でたたいて裏から、当て布をする。

 ④ のりがついた場合 (たまにありますね)

   炭酸水をスポンジにふくませて汚れを洗う。

 ⑤ 血がついた場合 (何かに興奮して鼻血が出たとき)

   スターチ水溶液と石鹸水で洗い流す。

 ⑥ 生卵がついた場合 ( めったにない )

   乾燥させて、かき落とした後、石鹸水をふくませたスポンジでふきとる。

 ⑦泥がついた場合 (これはよくある)

   完全に乾燥させてから、ブラッシングで落とす。

 ⑧赤ワインをこぼしたとき (デートのときとかあるよね)

   冷水にしばらく浸した後、こすり洗いする。

 ⑨鉄サビがついた場合 (めったにないと思う)

   シュウ酸で溶かして洗う。

 ⑩ タバコの焦げあとができたとき (スモーカーの人にあるかも)

   バターをつけたブラシで灰をおとし、スポンジをつかって、ドライ溶剤で洗う。
   
   クリーニングにだしたほうがいいかも。

 
 以上はあくまで伝説なので信じるかどうかはあなたにまかせます。ですが、どれもウールの性質を

 捉えているので、大丈夫だとおもいます。


                              テス・オーヒラ    
 
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2014.12.24

スーツ太平記  其の百四十八  ツィードの手入れ (1)

 当社でツィードのスーツ、ジャケット、ベスト、コート、スラックス、等をお買上げのお客様に、再度おて

いれ、メンテナンス、それにツィードの特性といったものを説明させていただきます。以前からスーツ太

平記を愛読していただいたお客様には、重複した説明になりますが、お許しください。

 ツィードのファンが、どんどん増えて、うれしい反面、取扱いをしっかりマスターして、これから10年、

20年、30年と、育ててやって欲しいのです。ツィードは、取扱いをあやまると、2年~3年で駄目にして

しまうものなのです。
ハリスツィード.jpeg

 まず第一にツィードの特性について、お話しておきましょう。

 1 針山の中に入れ、針のサビを防ぐ。

 2 角質化した皮ふ、ひじ、かかとをこすり、なめらかにする。

 3 カサカサした手をみがき、しっとりさせる。

 4 靴や家具を磨けば、ツヤがでる。

 5 ウールグリースは防虫効果もあり、ムシに食われにくい。

 上記のように、羊から刈り取られたばかりの羊毛(バージンウール)には、ウールグリースと呼ばれる

脂(あぶら)がついています。この脂肪分は、羊の皮ふから自然に分泌されるものです。

 羊は、天然のグリースを着ていることで、厳しい自然条件から身を守っています。

 テス・オーヒラが常に、ツィードをお買上げのお客様に口をすっぱくして言い続けていること。

「ツィードは、ブラッシングがメイン、クリーニングは、余程のことがないかぎり、出さなくともいい。」と

いう事の理由なのです。クリーニング業界からクレームがきそうですが、これは昔から英国では常識

とされていました。

 ドライクリーニングの溶剤が、このグリースの効果を弱くしてしまうのです。生地がいたむわけでは

ありませんので、ご心配なく、余程の気になる汚れがついたときにはクリーニングに出されてけっこう

です。

 それ以外の汚れは、簡便な手入れ法がありますので、次回に紹介します。

 来年は、羊の歳です。ウール復活!!


                                  テス・オーヒラ






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2014.11.26

スーツ太平記  其の百四十七   健さんのスタイル

 健さんが逝ってしもうた。・・・・・悲しか。・・・・健さんは、まっこと川筋もんやったねぇ。

 渋かねぇ。もう、あげな男はでてこんばい。
高倉健(1).jpg

 健さんはいつも、バラクータG9という、ゴルフジャンパーを着ていた。

ラグラン袖で、ウエスト丈、ボタン2個でとめる独特の衿、袖口と裾は、ニットでしぼる。ハンドウォーマー
 
は雨ぶたつき、そしてちょっとしゃれたタータンチェックの裏地といったもので、日本の衣料業界では、む

かしから「スウィングトップ」などと呼んでいるけど、このジャンパーの一般名はゴルフジャンパーだろう。

バラクータG9という名称はメーカー名なのであって、初めてこの型のジャンパーを作った会社が、英国

のマンチェスターにあるバラクータ社なのである。
バラクータ.jpg


 スポーツウェアだから、動きを充分に研究したデザイン、防風、防水をよく考えたディティール、そして

それを機能性の追求だけでなく、着る楽しさにまで発展させ、それらをまとめて、これ以上考えようもな

い一つの型式に仕上がっていることが、このジャンパーのすばらしさだと思う。
高倉健(2).jpg


だから多くの後追い商品も生まれたわけだけど、それでも後追いはしょせん先頭を追い越すことは

できない。

 これは、ベーシックの一つの見本である。


                                     テス・オーヒラ
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2014.11.11

スーツ太平記  其の百四十六   幕の内弁当と日本人(2)

 なんでも取り込むのが、幕の内構造である。とくに高級な、あるいは珍しい品が威を張っているのでは
ない。平凡な、手近な、土地のもの、季節のものをとりあわせて、非凡な華やかさを組み上げている。

 無駄を取り込む、一列に並べて客観的に評価すれば、優秀なものと駄目なものとが画然と別れる。
これが幕の内構造に配備されると、駄目なものも活き活きとしてくる。

ここに日本のものの見方をものにした見事さがある。

幕の内弁当を通じてあらわにされたものの作り方、納め方のめざすところは、なんでもとりこんで、すべてを活かす、摂取不捨の姿勢,衆生済度の構想なのである。食べ物を救うことによって、多かれ少なかれ好き嫌いのある人の方も救ってゆく。
生け花.jpg

 狭小で人口の多い国土で、複雑な自然を相手に長い歴史を重ねて、このようにぬけぬけとした芸、繊細にして鷹揚なる術をあみだしてきた。世界一芸術的素質をもつといわれる民族が、工学、技術をつくるから、それが凄いものにみのったのである。日本は西洋式の工学、技術を懸命に倣おうとしてきた。

計画、設計の技術にしても、つねにもちまえのやり方を後進的と恥じて、西欧のそれを尊んできた。
この世代を超えた謙虚さも生き抜く術として、たいへんな効果をもたらしているが、ためにわが手のうちにある技術をとりこぼしては惜しい。

不得手なるがゆえに、これを学び尽くそうとした謙虚さは貴重なものであったが、得手に帆を挙げて、と
いう言葉があるではないか。

この小柄な国が、大きな力を持つには、得手を活かしていかねば、無理があろう。不得手のことに無理
を重ねて、無理がたたってこの国は健康をそこないかけている。その得手のひとつが幕の内的なるまとめ方なのである。
茶室.jpg

 日本民族は美しいものをつくれる民族である。その優秀さに自信をもって、ものをつくるべきである。
欲望にすなおで、対応は臨機応変、やみくもなサービス精神、これがいいところである。

幕の内弁当も一輪の花も経済的ではあるが、禁欲的なところを超えている。このしたたかな優秀さは
今日までの日本を支えてきた底力であった。
坪庭.jpg

 幕の内弁当は、かっこよくておいしい。この欲深で美しいもの、こうした質のものが、だれしもの欲しい
ものなのである。こうした質が我々の未来の身の回りのすべてにあらわれてほしい。

我々の自信のなさが、日本人のよいところ、優秀なところを見失わせてきた。

ここで、気を取り直せば、魅惑的なものをぞくぞくと生み出し、美しく、かっこよく、やくやくと暮らせるよう
になるだろう、と栄久庵先生は、しめくくっている。

 これらは、ものづくりに関わる全ての日本人にとって、重要なヒントになるだろうと思っている。


                                   テス・オーヒラ





 
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2014.11.04

スーツ太平記  其の百四十五  幕の内弁当と日本人 (1)

 ご無沙汰しています。そろそろスーツ太平記を再開しようとおもっております。つまらぬブログですが、
しばらくお付き合いください。

 私は日本に生まれて本当に良かったとおもってゐます。もしもう一度、生を与えられたとしても日本人
として生きたいと思ってゐるほどこの国が好きです。
日本は自然災害の多い国で国土の8割以上は山岳地帯です。四季があり、湿気の多い水蒸気の国です。
そこからうまれる色彩感、哲学、人生観などは、砂漠の国や亜熱帯の国や、凍土の国や、乾燥帯の国
とはまったく違ったものになってゐます。
 
 私は日本の何が好きかと問われれば、この国の自然が好きだと答えます。もし、愛国心というものが
あるとするなら、この国の自然を守るためになら、それを犯そうとするすべてのものと闘う準備があります。

 こんな資源のない加工貿易国家の日本のものづくりは、他の国と比べて著しく特徴のあるものになってゐます。
今後はそういったお話を中心にしていきたいと思っています。

夕陽と富士.jpg

 日本の工業デザイン界の先駆けであり、世界的にも著名な、栄久庵憲司氏の「幕の内弁当の美学」
(絶版)をやっと古書市で見つけて読了しましたが、身も心もふるえるほどの共感の念を感じました。

 その中から気になる文章を拾ってみると・・・・・・・・あるとき外国の賓客をもてなしたことがあった。
あつい話題はめぐりめぐってやむところを知らず、ふと戸外をみれば夕陽が傾ききっている。
 頃もよし、かねて用意の食卓へと客をいざなう。食卓には、このような場合に日本では常套ともいえる
仕出しの弁当。出入りの料理処に、外国の客人に心を尽くすように懇じたまにあわせの幕の内弁当で
ある。外国人には幕の内の木箱ひとつがあまりに単純にみえはせぬかと、一輪の花を添えておいた。

 私は、一輪の花をそっとわきにおろして、幕の内弁当のフタをとった。客人もこれにならった。
オッと、客人は感嘆の声をあげた。漆黒の四角い箱に、これほどのいろどりの世界が秘されていようと
は、思いもよらなかったのである。
彼は、やおらフタをこれにかぶせ、一輪の花をのせ、そして花をおろし、フタをとった。最初の衝撃(ファ
ーストシヨック)を、繰り返し味わうのである。
 繰り返しつつ彼は、美しい、といった。

 彼は、私の解説した多元なるものの一元化が、幕の内弁当の造型作法に、たしかにみてとれる、と
告げた。彼のうけた衝撃は、つづけて私の衝撃となった。幕の内弁当の美の理想、一輪の花にあり。
一元化の先に、理想としての無がある。

 幕の内弁当にみる、おそるべき造型精神こそ、日本のオリジナリティーを象徴しうる存在であると、
観想はふくらみにふくらんだ。

幕の内.jpg

 千変万化の夕焼けと、澄みわたった日輪との対比、大自然のたくまざる演出が、一輪の花と幕の内
との対比にうつしこまれていた。
それほどに雄大な構想を、日本の造型精神は、実体化していたのかと、あらためて畏敬の念を覚えた。

師はここにあり、と私は友に諭した。

 日本は弁当ひとつを数百年がかりで磨きぬいてきた。この弁当ひとつの成り立ちを、造型精神を、
美学を分析し尽くすならば、日本が世界に伍して生き抜いてきた秘術の何たるかがあかされよう。

 そう直感して大変興奮した私は、弁当ひとつを前にして滔々一夜の日本文明論を風発させてやま
なかった。

 日本人の考え方、日本の未来を切り開くカギが、なにやら幕の内弁当に隠されているように思って
きたのである。


                                             つづく

                                      テス・オーヒラ

 

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2014.08.07

スーツ太平記  其の百四十四  コロニアルスタイルの提案

 人生おもてもあれば裏もある。神田鍛冶町の裏通り、場末のしがない安酒場、
一人飲む酒、未練酒。きったはったはむかしの話。今じゃ人情紙風船、あばよ、さすらい一人旅。
神田界隈.jpg

 なんか、なつメロのモノローグみたいな書き出しですが、本当暑くてやってらんねぇーのです。
冷房のないところで仕事をしている方は、さぞ辛いと思います。

 つゆあけのこの時期の日本国は亜熱帯のカントリーになってしまう。

スーツなんか着れるわけがない。半袖、半ズボンがあたりまえだ。

クールビズとかなまぬるい。  思考停止、頭脳マヒの熱帯雨林の原住民と化す。

だれもが涼しいスタイルをしたくなる。裸ではまずいので日本人らしいセンスのいい清涼スタイルを

身につけたくなる。

 東南アジアや中南米の人たちのファッションは参考になる。
コロニアル.jpg

綿は洗いざらしのキャラコとかサッカーをルーズフィットで、麻は、ざっくりした目の粗いものを、サンド

ベージュやネイビーの涼しいカラーで、ウールは、夏用のトロピカルのザラッとしたものを身に着けて

パナマ帽もおつなもの。ネクタイなんかヤボだし、ハマカラーの開襟シャツにダボッとした股上の深い

ツータックの麻ズボン、下は皮のサンダルかコンビのオックスフォードで決まりだ。

 こんなコロニアルスタイルが、私の盛夏のスタイル提案です。


                                テス・オーヒラ

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2014.07.07

スーツ太平記 其の百四十三  虚しさの後にくるもの

 名作といわれる作品を読み返すと、読むたびごとに以前とは違う読後感に襲われる。まるで気分のい
いときに古い焼酎を口にふくんだかのような、えもいわれぬ酩酊感と似ている。

 いまだに理解できていないというか、人生の奥深さというか、虚しさというか、そんなこんなを一編の
映像に仕立てたような、そんなすごいショートストーリーにいつもまいってしまうのだ。

 今日はその中でも二作品、紹介しよう。

まず一つは、みなさんもよく知っている、アーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」、これは福田恆存訳が
絶対です。このストーリーは、読む世代によって感じ方が違うと思う。
老人と海-1.jpg


 今年のワールド・カップの「日本代表」は、自分たちのサッカー(攻撃的サッカー)という大いなる理想を
掲げてベストエイトめざしていた。だがワールド・カップに突入し、その理想は、コートジボワールやギリシャ、コロンビアによってズタズタ、ボロボロにされ、跡形もなく崩れ去った。

 失意の念で帰国した日本代表に、マノーリン少年のようなあたたかい国民性のもと、今代表たちは
ぐっすりと眠って疲れを癒している。これがいいのか悪いのかはよくわからない。

 一億円のサマージャンボが当たったとしよう。それは人生の夢だったはずだ。やがて、様々な方面から
サメのような、ハイエナのような、くだらぬ奴らによって、その賞金は食いちぎられ跡形もなくなるだろう。
 
 そして最後に愛する妻が「あなたは真面目な人よ、コツコツと今までどうりに働くことができれば、それが一番幸福なことよ。そして、そんなあなたが一番好きだわ。」
老人と海(2).jpg

 ポジティブに人生に向き合い、あるときは耐え忍び、あるときは前に出て戦い、それでも敗れてしやがみこんだ時、救いがあってもなくても、それを受け止めて生きてゆく人間の強さをヘミングウェイはこの作品で描いている。そして、ほんの少しの救いが、マノーリン少年という存在なのだろう。

 この作品は、読むたびに考えてしまう。ラギッドでシンプルなヘミングウェイの最高傑作である。


 今一つは、松本清張の「或る小倉日記伝」である。これは、森鴎外という文豪の空白の小倉時代を
調査することに生きがいを見出した一人の身体障害者とその母の物語である。息子の障害者としての
人生を思って再婚もせず、ひたすら母として介護し協力し、家作も売り払って息子に尽くすが、戦後の
混乱で息子は死んでしまう。そして、鴎外の空白の小倉時代の日記が発見される。
鴎外.jpg

 彼の努力は徒労だったのか。この徒労というか、虚しさを作家はやさしく見つめている。あたかも自分の人生であるかのように。

 世の人々の多くの人生も、良くも悪くもこのように徒労で終わることが多いのかもしれない。

しかし、その人生の過程において、何かに情熱を傾ける。その過程こそがその人の人生そのものなの
であろう。そう思って、ただ前を見て歩いてゆく。


                                  テス・オーヒラ

 

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2014.06.10

スーツ太平記  其の百四十二  カムイ伝と現代社会

 お久し振りです。梅雨入りして、鬱陶しい気分ですが、ワールドカップと読書で吹き飛ばしましょう。
と言いつつも、ワールドカップの日本の試合は、怖くて見られないのですが。

 法政大の田中優子先生の「カムイ伝講義」が、ちくま文庫に収録されたのでさっそく読んでみました。
その中で、「カムイ伝」は、江戸時代を舞台にしながら、その向こうに近現代の格差、階級社会を見ている。百姓たちの努力の果てに、それを乗り越えた社会も見ている。
カムイ(1).jpg


 しかし、その史観がユートピア的社会主義ではない証拠に、カムイは、常に「いま」を否定して漂
泊しけているのだ。「カムイ伝」の魅力は、そこにある。・・・・・・・・・と述べており、カムイが持ち続け
るのは自由ではなく批判である。最底辺の人間が持つ批判のエネルギーそのものである。
それは、カムイの変装のように、あらゆる人間の姿をとる。どこに潜んでいるかわからない。
カムイ(2).jpeg

 「カムイ伝」を読み終わった後、私たちの心の中に残るのは、「今もカムイは、どこかに潜んでいる」という感覚だ。

 「カムイの潜む現代社会」という視点で今を眺めると、この社会は驚くほど変わっていない。21世紀にも
なって、ちゃんと階級もあり、格差もますます健在だ。

 そして最後に、「カムイ伝」は時代を超えて、むしろ今のためにあるのではないか。
私たちは、歴史の中で、いったい何者なのかと問い、何ができるのかと考え、カムイは、今どこに潜んでいるのかと、耳をすます。

 カムイは、この世界をどう見ているか。どう考えているか。カムイなら、どこで何を仕掛けるだろうか、と、私は考えをめぐらしている。・・・・・・と田中先生はしめくくっています。
カムイ(4).jpg

 名作というものは、百人が百通りの感動をともない、読む年齢によってもまた違う感動を発生させます。
「カムイ伝」は、劇画というヴィジュアルな映画に似たインプレッションで江戸時代を描きましたが、これもまた立派に文学といえると思います。
カムイ(3).jpg

 現代のように多くの情報をすばやく捕捉でき、民主的に政治をおこなえる国になっても、なお、まちがえた判断が、この国をまちがった方向に導いてゆくのではないか、とカムイはどこかでつぶやいているに違いない。


                                     テス・オーヒラ

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2014.05.06

スーツ太平記  その百四十一  富岡製糸場世界遺産へ

 文化庁は4月26日、群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産登録を、国連教
育科学文化機関ユネスコが勧告したと発表、6月15~25日にカタールで開かれる世界遺産委員
会で正式に決まる見通しとなった。国内14件目の世界文化遺産となる。自然遺産も含めた世界
遺産全体では、国内18件目となる。

        富岡(1).jpgのサムネール画像

 繊維に深くかかわる人間として、こんなうれしいことはない。特に過去2回、このブログで富岡をと
りあげているだけに、ことさらにうれしい。世界遺産となる資格は十分にもっていたと思うし、遅すぎ
たくらいだ。

 富岡製糸場は、明治維新から4年後の1872年、当時の主要な輸出品だった生糸の品質向上と
増産を目的に、明治政府が設立した官営工場である。
富岡(2).jpg
 西欧の技術を導入して生糸の大量生産を実現、日本の近代化の契機となっただけでなく、世界
の絹産業に発展をもたらしたことが評価され、遺産の保全や管理についても適切であるとされた。
製糸場の建設と製糸技術は、明治政府が雇ったフランス人技師ポール・ブリュナが指導、建物はフ
ランス人の設計で、日本人の大工が建てた「和洋折衷」だ。れんが積みには、日本人大工が粘土
壁を作るときの技も使われた。完成後は全国から約400人の女性工員が集まり、フランス人技術
者の下で生産を開始、富岡の経験者が、全国の製糸場に技術を伝えていった。
富岡(3).jpg
  
 糸を作る作業は、蚕の繭を煮て細い糸を取出し、それを束ねるという手順。束ねる作業は当時、
女性工女が小さな木の器械を使い、糸車を回していた。座繰製糸と呼ばれ、製糸場内の繰糸場
には、この器械がずらりと並んでいた。

 製糸場は93年、民間に払い下げられた。第二次大戦後は全面的に自動繰糸機を導入して効率を
上げ、高品質の生糸を大量に生産。
 だが、安い生糸の輸入増などで1987年、115年続いた生産を終えた。

 操業停止後も民間会社が長く保存に努めた。2005年には、富岡市が所有し、国史跡に指定される。
2006年には、官営時代の構造物が重要文化財にも指定された。
 
 ユネスコは勧告で、「19世紀末期に養蚕と生糸産業の革新に決定的な役割を果たし、日本が近代
工業国に仲間入りする鍵となった」と歴史的な価値を高く評価した。
富岡(4).jpg
 
 あと、製糸場の他に、近代養蚕農家の原型「田島弥平旧宅」(伊勢崎市)、養蚕技術の教育機関
「高山社跡」(藤岡市)、岩の隙間から吹く冷風を利用して蚕の卵を貯蔵した「荒船風穴」(下仁田町)
で構成されている。是非、機会があればまわってみてください。

 補足ですが、16歳で富岡に入り、伝習工女として製糸技術の習得につとめた一年数か月をみずみ
ずしい筆致で回想した和田愛の「富岡日記」(みすず書房大人の本棚)も興味があったら読んでみて下
さい。


                                     テス・オーヒラ

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